ヒストリックハウス名:Dunster Castle(ダンスターカースル)

所在地域:イギリス、サマセット

外観は要塞、中は美しい邸宅、600年に及ぶラテラルファミリーの家

✴ダリアの訪問・一言感想✴

ダンスターカースルは、ドーバーカースルのような大規模な要塞風のカントリーハウスで、

とても行ってみたいハウスの一つでした。

泊まっていたアクスブリッジからは、車で1時間ほどですが、その1時間の道はローカルの道で、延々と丘を越え、山を越えていきます。ローカルの道路は、村や町に入ると時速を30キロや20キロまで落とさなくてはならず、ことさら道のりが長く感じられました。

もうそろそろかな・・・と思っていたら、丘の中腹にダンスターの姿が現れました。威風堂々とした要塞風のつくりです。

エントランスから入るとすぐに、急な坂道が始まり、ゲートハウスをくぐります。

ちょうど使用人棟ツアーの時間開始の時間で参加し、続いてキッチンツアーにも参加できました。通常の見学では見られない部屋の数々をみせてもらいました。どこのハウスでもそうてますが、使用人の部屋や作業部屋は、とても味気ないものですが、ダンスターは使用人が快適に働けるよう最大限の配慮をしていたということで、フットマン(男性使用人の一種)の部屋には美しい壁紙が貼られていいました。

メインエントランス、19世紀に建築家、アンソニー・サリバンが増築したタワーがメイン

エントランスになっています。一家のモットー、「強さで得て、スキルで保つ」が刻まれています。

このハウスは、14世紀からほぼ一貫して、ラテラル家のカントリーハウスでしたが、17世紀に持ち主だったフランシス・ラテラルの時代は、贅沢を楽しんだ時代で、とても凝った家具や天井飾りが残されています。

座るためというより、見せるための椅子。

アウターホールの美しい石膏天井。

ドローイングルーム。“オードニル”(くすんだ緑)色の壁に、パネリングが施され、そこに絵が配されています。さりげないけれど、工夫された美しい設え。

ドローイングルームの天井飾り。この天井飾りがつくられた19世紀の当主、ジョージ・フォウン・ラテラルの頭文字、GとLがさりげなくデザインに組み込まれています。

インナーホールの暖炉。ドームズデイブックに記載されていた、最初の領主、“The de Mohuns”と彫られています。”The de Mohuns”は、ウィリアム征服王の指令をうけて、この地の管理にフランスからやってきました。ラテラル一族は、The de Mohunsから、この領地を買い取ります。

17世紀につくられた、手のこんだ彫刻がある階段。

チャールズ2世が泊まったといわれるベッドルーム。

ライブラリー

ガーデンのラバーズブリッジ

今も粉ひきに使われている水車

ダンスターカースルの城下町、ダンスタービレッジは、カースルから歩いてすぐ。カフェやショップが並ぶ小さな村です。訪れる方は、ぜひビレッジまで、足をのばされることをおすすめします。

✴ダリアのインサイト✴

~ダンスターに温かみを残したドロシー~

ダンスターカースルは、1376年にウィリアム征服王の部下だったデ・モハンス家から、ラテラル家に売却されて以来、ラテラル家のカントリーハウスでした。ラテラル家は、近くにもうひとつカントリーハウス、イーストクアントキシヘッドの「コートハウス」を所有していたので、当主によっては、ダンスターに住まない時代もありました。

フランシス・ラテラル(1659-90)とその妻メアリーの時代は、ダンスターがもっともにぎやかで、豪奢だった時代で、この二人は、ダンスターを贅沢に改修し、手の込んだ彫刻を施した階段や、精密な細工をした石膏飾りを天井につけました。しかし、フランシスは若くして無くなり、メアリーはダンスターを去り、その後を継いだのは、弟のアレクサンダーと妻のドロシーでした。

アレクサンダーは、ダンスターを継いでから間もなく亡くなり、息子はまだ子供であったため、妻のドロシーが、ダンスターの領地とハウスを管理、運営します。フランシスとメアリーが行った贅沢な改修は、あとにかなりの借金を残していました。ドロシーは、杜撰だった領地経営を立て直し、この借金を間もなく返済します。

息子たちは、ロンドンで主に仕事をしていたため、1723年に亡くなるまで30年以上、ドロシーはダンスターの運営管理を行いました。

この間に、ドロシーは、デ・モハンスの時代に要塞が建てられていた丘に、登るためのゆるやかな散歩道「ニューウェイ」をつくり、丘のてっぺんには、芝を植えてボーリンググリーン(屋外ボーリング場)を作ります。そして、ボーリンググリーンの脇、カースルを臨める場所に、エレガントな「サマーハウス」を建てて、ボーリングとカースルの両方を眺めながら、中でお茶を飲み、おしゃべりを楽しめるようにしました。

ドロシーは、当初、次男のアレクサンダーと結婚したので、ダンスターの主となることは夢にも考えていませんでした。しかし、ドロシーが残した、ニューウェイやキープグリーン(ボーリンググリーン)、サマーハウスは、ダンスターカースルに、優しさを感じる温かみを加えていて、それは、まるでプレゼントの箱にかかる、きれいなリボンのように思えるのです。

参考資料:「Dunster Castle and Gardens」 National Trust