ヒストリックハウス名:ウォラトン・ホール

所在地域:イギリス、ノッティンガムシャー

訪問:2017 年3月28日

Sir Francis Willoughby (1547-1596)

フランシス・ウィロビー卿

エリザベス1世女王の時代、バーリー卿ウィリアム・セシルのセオバルズ、バーリーハウス、シン卿のロングリート、サットン卿のホルデンビー、キルビーといった大規模なカントリーハウスが次々と、建てられました。どれも壮大華麗な館ですが、1588年に完成した今回のウォラトン・ホールは、そのデコラティブさ、装飾の多さでは突出しています。

ロングリートと同じ石工棟梁ロバート・スマイソンが関わって建設していますが、すっきとした造りのロングリートとは、かなり趣が異なります。

フランシスは、石炭ビジネスで利益を上げたことで勢いがつき、鉄など他の新規ビジネスに借金をして投資。ウォラトンの建設も巨額の借金をして建設します。しかし、新規ビジネスへの投資は上手くいかず、家は完成しても、借金を返す見通しが無く、困り果てていました。

しかし、これまでになかった装飾美麗な館は、宮廷でも評判です。

1592年の春、旧知の仲であるシュールズベリー侯爵夫人、俗称ハードウィックのベスが、興味深々で、ロンドンからの帰り道、ウォラトンを訪問します。ベスは自身の新ハウス・ハードウィックニューホール(本サイト参照)を建設中でした。

ベスは、資産家で知られています。頼みようによっては借金も相談できるかも・・・

フランシスは、満面の笑みでベスを迎え、ディアパークを臨む庭園の散歩に誘います。

ベス「借金の相談は、あまり得意では無いわね。でもウィロビー卿にお話されて、断わる勇気は私には、ないわ。ウィロビー卿と私の間の信頼関係がいつまでも今のように良い状態でいるためには、ウィロビー卿のご機嫌を損ねない(社会的地位に相応しい、体面を保てる)条件が必要ね。額面分のお持ちの土地を担保にしていただき、担保引き取り人は、私の孫のアラベラ。万が一、ウィロビー卿にもしものことがあった場合は、アラベラに不動産の権利は移していただく、そして、金利は毎年300ポンドを私に支払っていただく。この条件でよろしければ、おっしゃっている3,050ポンドは書類が整い次第、すぐに即金でお貸しするわ。」

フランシスの周りには、3,050ポンドの大金を担保ありでもすぐに貸してくれる人など見当たらず、フランシスは、「ベス!心から感謝、ありがとうございます」と言って、このディールを即決します。アラベラは母系でベスの孫ですが、父系でステュアート、テューダー両王家に繋がることから、王族が担保引受人になっていることは、フランシスの体面をせめても救ってくれていて、それも即決に繋がったのです。

4年後、1596年、フランシスは、49歳で死亡。借金は全く返せておらず、毎年の金利だけはベスにきちんと払われていました。そして担保の土地は、ベスの孫のアラベラの所有となったのでした。

その後、アラベラは、エリザベス1世の次の国王ジェイムズ1世と曽祖母(マーガレット・テューダー)を同じくする王族でしたが、国王の意志に反く駆け落ち結婚を策し、1615年ロンドン塔で病死しました。ウォラトンは、ウィロビー卿の女系子孫に他大負債と共に相続されました。今ではノッティンガムシャーが管理しています。

館内は、自然史博物館となっていて、多数の動物の剥製で埋まっています。カントリーハウス当時の造りが残る地下のキッチンと、最上階にあるプロスペクトルーム(舞踏室)はガイドツアーで見学することができます。プロスペクトルームは広い窓から臨む、ディアパークの景色が素晴らしいのですが、ガイドさんの説明は

「この部屋は眺望が素晴らしいのですが、すぐに使われなくなりました。なぜなら、ここまで上がってくる唯一の螺旋階段が、狭過ぎて当時のドレス姿で、昇降するのは大変すぎるし、危ないことに気づいたからです。」。。。

フランシスは、外観には非常に拘って建てたのですが、金策に忙しかったのか、内部の動線や使い勝手には気が回らなかったようです。

映画バットマン「The Dark Night Rises」(クリスチャン・ベール主演)のロケ地になっています。エリザベス1世時代に建てられた建築物が、ブルース・ウェインの邸宅になっている設定に痺れます。

エリザベス時代、まだ珍しかった列柱装飾と外階段。
ドリス式とイオニア式を積み重ねた列柱構造。列柱を上下に配置するのはこの時代、イギリスではまだ珍しい

地下のキッチン、飲料水を貯める貯水プールもありました
プロスペクトルーム(舞踏会などを開く大広間)からの眺望

参考:Mary S.Lovell, Bess of Hardwick,  Charles Philips Castles, Palaces & Stately Houses of Britain & Ireland , Nottinghamshire, WALLATON HALL website